我輩は旅の牧師である。引き留める者はない。

06/10/2020▶︎ 我輩は酒場牧師である

ともあれウガンダである。ウガンダは本当にいい国であった。

我輩は酒場牧師である。 前科はまだない。

さて、舞台は目まぐるしく変わる。まるでニャンコちゃんの目のように。

ともあれウガンダである。ウガンダは本当にいい国であった。自然も豊かですばらしいし、何より人がやさしくて親切である。

我輩はウガンダの西の端から入国した。そしてこの国を横断して東の端から出国し、そのままケニヤに向かう予定だった。しかし予定は未定であるに等しい。

前々回に書いたと思うがウガンダは南接する隣国タンザニアと戦争中であった。また、ウガンダ横断には北コースと南コースとがある。本来ならばなるべく戦線に近いところは避けて北コースを取るべきであろう。

しかし我輩は南コースを選んだ。なぜか? 答えはカバである。そうだ、カバが悪いのである。

我輩はカバ牧師である。踏まれたことはまだない。

答えはカバである。そうだ、カバが悪いのである。南コースを少し行くと「マーチソンフォールズ国立公園」というのがあってそこはカバの名所である。我輩はカバに格別の愛情を抱くものではないがここはアフリカである。やっぱ見てえじゃん、カバ!

見ましたよ、見ましたとも!もうゲップが出るくらいカバを見ましたね。夜中に泊まっていた小屋から用を足しに出るといましたよ!目の前にバーカ、じゃなかったカバが!

近くで見るとでけえのなんのって!まあこちらを見向きもせずに草を食い漁っていたのは幸いでしたな。カバはアフリカでも最強というか最も危険な動物の一つであると言われてるしね。

我輩はその国立公園でカバ諸君の絶大な人気を獲得してそこを去ったのは言うまでもない。我輩はカバ牧師である。踏まれたことはまだない。

我輩はヒッチ牧師である。車はまだない。

ウガンダの東の端首都の町カンパラを目指して歩き始めた。いや、ホントはね、歩きたくなんかないんだよ。ヒッチハイクなんで車を止めてタダで乗せてもらいたいのはヤマヤマなんですう。

でもね、車が来ないんだよ。この時知ったね、ヒッチの最大の敵は人が乗せてくれないことじゃなくて車が来ないことだって。

逆方向はけっこう来るんだよ。乗合タクシーにぎゅうぎゅう詰めで屋根に山のように荷物を乗せてね。でも我輩の行く方向には車は来ない、一台も。

これは本来おかしいんだよ。だって来た車は必ず元来たところに帰るはずでしょ?我輩はヒッチ牧師である。車はまだない。

「お、アフリカン逆ナンか!?」と一瞬思ったがそんなはずはない。

そんなある時嫌々ながら歩いてるとまた向こうから山積みぎゅうぎゅうタクシーが来た。「けっ!チキショーめ!反対側にも走ってみやがれ!」などと悪態をついているとそのタクシーから降りて来た一人の女性が我輩に声をかけて来た。

「お、アフリカン逆ナンか!?」と一瞬思ったがそんなはずはない。何しろ我輩は不人気牧師である。モテ経験はまだない。

その人はこう言った、「どこへ行くんですか?」

我輩「カンパラへ」

女「あなたはこの国が戦争中だと知らないの!?地元民の私たちだってこうやって逃げて来てるんじゃない!やめなさい!危ないわよ!」

我輩「(大げさな、と思いながら)いや、大丈夫だよ、これまでもいろいろ危ねえ橋渡って来たし」

女「そんなに甘くないわよ。やめたほうがいい、絶対」

などというやりとりがしばし続いたが結局我輩は「いや、大丈夫。サヨナラ」と言い捨てて歩き去る。

「けっ、大げさなこと言いやがって、あんなやつおならプーだ!」

など言いつつ30分くらいは歩いたかなあ。ふと誰かの声が聞こえたような気がして振り返るがもちろん誰もいやしない。

両側にはバナナやヤシのような木が茂り、赤土の道が延々と続くばかりである。

しかしまた声が聞こえるような気がする。そんなことを二度三度繰り返した後、今度こそ本当にはっきりと声が聞こえた。

振り返ると誰かが何か叫びながらこちらに向かって駆けて来る。立ち止まって待っているとなんと先ほどの逆ナン女である。

いけね、なんか忘れ物届けてくれたのかな?なんて思ってると息を切らして走って来た彼女はこう言ったのだった。

「やっぱりあなたを行かせるわけにはいかない!」

「はあ?そんなことで2kmほどもある距離を走って来たの?バっカじゃねえの!」(これは我輩の心の声)

「行かせないわ。だって行ったらあなたはきっと死ぬから」

「死ぬ!?なに言ってんの?」

「危険すぎるわ。私たちでさえ危険すぎて逃げて来たのよ。外国人のあなたが行ったら絶対殺されるわ」

いやいや、絶対死ぬと言われたらこれは心が動きますよ。我輩は言葉に詰まった。

「ね?やめて。お願い!お願いだから行かないで!!」

長い話を短くして申し上げましょう。結局それでも我輩は先へ進んだのである、泣きながら我輩を止めようとする女を振り切って。

「男は先へ進むものなんだよ」これが我輩の彼女に残した言葉である。

振り向きもせず我輩は歩き続けた。だいぶ経ってから振り返ってみた。驚いたことに彼女はさっきと同じ場所に立ったままだった。じっとコッチを見ていた。

一瞬彼女の元へ駆け戻ろうか、という思いがよぎった。。。

だが我輩はそうはしなかった。黙って歩き続けた。

あの人が、ただ、あの人が。。。

もう少しキレイで、もう少しやせていさえしたら、我輩は戻っていただろう。

我輩は旅の牧師である。引き留める者はない。

中村 透(牧師バー店主/主任牧師@酒場で教会)



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06/10/2020▶︎ 我輩は酒場牧師である

Posted by SANBI.us